【騒音】苦情の統計を調べてみた

結論

文章が長いので、結論だけ先に書きます。

騒音の統計は環境省だけが発表しています。
統計方法は「各役所に寄せられた苦情件数の合計」です。

しかし、この統計には 大きな問題 があります。
それは「役所が受理した苦情件数だけ」をカウントしている ことです。

それを環境省では「苦情件数」として公表しています。

つまり、受理されなかった苦情は 統計に入っていません
これでは 実態とズレたデータ になっている可能性が高いのです。

騒音の苦情統計はどこで公表されているのか?(詳細情報)

騒音の苦情件数を公表しているのは環境省のみで、警察には統計がありません。

警察への相談件数データなし(統計を取ってない)
役所への相談件数データあり(環境省が公表)

他の統計は見つけられませんでした。
つまり、騒音の苦情件数を知るための公式データは環境省のものしかない ということになります。

環境省の統計方法

環境省の統計方法は次の通りです。
環境省の統計方法は「各役所に寄せられた騒音の相談件数の合計」です

では、発表されているデータを見てみましょう。

騒音の苦情件数(環境省発表データ)

  1位2位3位4位 
年度全体建設作業工場・事業場営業家庭生活その他
2022年20,436件7,736件5,236件1,946件1,399件etc
2021年19,700件7,460件5,473件1,456件1,389件etc
2020年20,804件7,841件5,554件1,911件1,583件etc
2019年15,726件6,062件4,422件1,411件1,131件etc
2018年16,165件6,050件4,610件1,383件968件etc

家庭生活の騒音の苦情件数…少なすぎない?

たったの1,399件?

2022年のデータでは 家庭生活の騒音苦情は1,399件。
しかし、一般的に最も多いとされる 家庭生活(生活騒音)がこれだけしかないのは不自然です。

なぜなら、どのニュースやWEBページでも「家庭生活(生活騒音)」の騒音がランキング1位だからです。
それなのに、4位にとどまっている。

「家庭生活」の騒音といえば、以下のようなものがある。

  • エアコンの室外機の音
  • 上階の足音
  • ピアノや楽器の音
  • 掃除機・洗濯機の音
  • 子どもの泣き声や大人のはしゃぎ声
  • 隣の庭でのバーベキューや洗車・ケルヒャー
  • DIY作業など
  • 家庭で発生する騒音全部

これらの騒音が 全国で年間1,399件しかない?

47都道府県で割ると…
1,399 ÷ 47 = 29件(1県あたり年間29件)
さらに月ごとに計算すると…
29 ÷ 12 = 2.4件(1県あたり月2.4件)

1つの都道府県で、たった月2.4件しか苦情がない計算になります。
これは あまりにも現実と違いすぎる と思いませんか?

2022年は騒音被害が急増した

2022年といえば、コロナ禍。
リモートワークが急増した年になります。

それに伴い、家庭内の騒音トラブルも増加しました。
実際、ニュースやWeb記事では「家庭生活の苦情が急増」と報じられていた

しかし、その年の苦情件数は、たったの1県に月2.4件
環境省の統計では「家庭生活の騒音苦情」が1県に月2.4件しかなかったと報告されている。

本当にこのデータは正しいのか?

統計のカラクリが判明

環境省の統計には、大きな問題があることが分かりました。
その問題とは「役所が受理した苦情のみをカウントしている」 ことです。

  • つまり、受理されなかった苦情は統計に含まれていません

例えば「家庭生活の騒音苦情は1,399件」とされていますが、これはあくまで受理された苦情の数であり、受理されなかった苦情はカウントされていません。

調査した方法

この問題を調べるために、「騒音規制法施行状況調査」を調べました。
なぜなら、環境省が統計を作成する際に使用しているのが「騒音規制法施行状況調査」 だからです。

すると、調査票には次のように書かれていました。

地方公共団体が受理した苦情件数

ここでいう「地方公共団体」とは、役所のことを指していると考えられます。

つまり、1,399件は受理された苦情件数で、受理されなかった苦情はカウントされていません。

統計の問題点

環境省の公表する統計では、この条件を明記せず「一年間にあった騒音の苦情件数」 という表現を使っています。

この書き方では、あたかもすべての苦情がカウントされているかのように誤解を招く可能性があります。

これは、ミスリーディングな表現 だと言えるでしょう。

参考資料↓

「一年間の苦情件数」 と勘違いしてしまいます。
しかし、実際には 「役所が受理した一年間の苦情件数」 です。

収穫

しかし、この事実を知ったことで、家庭生活の騒音が第4位なのか?という疑問が納得できた という収穫がありました。

ここからは推測になりますが、解説は簡単にできます。

家庭生活の騒音が第4位の理由「受理されにくい」から

これは 「法律の有無」 が関係しています。

  1位2位3位4位 
  法律がある法律があるほぼない法律がない 
年度全体建設作業工場・事業場営業家庭生活その他
2022年20,436件7,736件5,236件1,946件1,399件etc
2021年19,700件7,460件5,473件1,456件1,389件etc
2020年20,804件7,841件5,554件1,911件1,583件etc
2019年15,726件6,062件4,422件1,411件1,131件etc
2018年16,165件6,050件4,610件1,383件968件etc

家庭生活の部分を見て下さい。

家庭生活の騒音には 法律がほぼ存在しません
そのため、役所は対応せず、苦情が受理されにくい のです。

一方、建設作業や工場の騒音には 法律がある ため、役所が対応し、受理されやすい のです。

つまり

  • 法律がない = 受理されない = 統計に入らない

という構造になっているのです。

まとめ

環境省の騒音苦情統計は「受理された苦情」だけを集計したもの。
受理されなかった苦情はカウントされていないため、実態とは異なる可能性が高い。

しかし、環境省のWebサイトやパンフレットには 「苦情件数」 とはっきり記載されています。
本当に知りたいのは、受理されなかった苦情も合わせて、実際にどれだけの苦情があったのか? ではないでしょうか?

今後、騒音問題の実態を正しく把握するには、統計の取り方そのものを見直す必要がある と思います。